Ⅸ. 参考資料
ここでは最後に、参考にした資料と彼を題材とした作品群についていくつか紹介する。
参考文献
- 『幕末開明の人 小栗上野介』東善寺
- 『小栗忠順のすべて』村上泰賢著 新人物往来者出版
- 『幕府衰亡論』福地源一郎著 東洋文庫
小栗が晩年に仮居を構えた東善寺が出版。彼の足跡が詳細に描かれており、特に権田村での晩年の生活に関しては圧倒的な情報量を誇る。東善寺は現在でも小栗忠順の名誉回復に非常に力を入れており、境内の展示は内容も展示方法も素晴らしかった。因みに住職の村上泰賢さんはとても気さくな方で、私に対しても丁寧に権田村での小栗の様子について教えてくださった。
東善寺住職、村上泰賢さんによる著作。東善寺HPでも小栗忠順の人物紹介はしているが、その内容をより詳細にした書籍である。上記の東善寺発行の書籍と合わせて読むと村上氏の小栗の名誉回復にかける情熱がひしひしと伝わってくる。私の本は東善寺を訪ねた際に住職がタダでくれたものであり、サインもしていただいた。
特に明治期にジャーナリストや作家、政治家として活躍した福地源一郎による資料。一般的には明治時代の人物という印象が強いが、実は幕末期は御家人として取り立てられており、幕府の使節としてヨーロッパ留学を経験した人物である。大政奉還の際には、徳川慶喜が自ら大統領になり新政府の主導権を握るべしとの内容の意見書を実際に小栗忠順に対して提出までしており、(その意見の妥当性は認められたものの、慶喜の意向が判然としない事などの理由から容れられる事が無かった。)そのような彼による幕府の記録は刻銘かつ簡潔。若干徳川幕府を持ち上げすぎている感もあるがそれでも素晴らしい一冊である。
主な登場作品
- 『君はトミー・ポルカを聴いたか』
- 『天涯の武士』
- 『またも辞めたか亭主殿〜幕末の名奉行・小栗上野介〜』
- 『龍馬伝』
小栗と並んでこの本の主人公として取り上げられているのは、若干十六歳にしてポーハタン号に乗船し遣米使節と行動を共にした立石斧次郎である。叔父が幕府のオランダ語通弁を担当しており、幼いころから長崎で英国人より英語を学んでいたことが同行の理由であった。英語が非常に堪能かつその若くて明るい人柄は堅い幕閣の面々としばしば対比され、米国人の絶大な人気を得たと言う。この時に米国で作られた歌がトミー・ポルカである。(幼名の為八→タメという呼ばれ名から米国人乗組員がトミーと呼んで可愛がったらしい。)
木村直巳著の漫画作品、全四巻。小栗忠順を取り扱った貴重な漫画作品であるが、残念ながら絶版。中古品を探すか図書館で閲覧するかしか中身を見る方法が無い。かくいう私も東善寺へ見学に行った際にこれが手に入るのではと期待していたのだが、全巻揃えての取り扱いはしていないとのことであった。
2003年にNHK正月時代劇として放送された90分ドラマ。小栗を主人公として描いた映像作品は現在までこの一作のみである。小栗(岸谷五郎)の他、勝(西村雅彦)や先述の立石斧次郎(塚本高史)も登場しており、渡米から斬首までの一連の行動が描かれている。正直作品の質はそれほどなのだが、貴重な主演ドラマということで紹介した。
徳川方の重要人物であったことから、幕末を舞台としたドラマには稀に小栗も登場する。最近では2010年のNHK大河ドラマ『龍馬伝』に数話のみだが出演している。志士達を厳しく取り締まる幕府の要注意人物という扱われ方で、演じた俳優は斉藤洋介。氏の風貌と相まって危険で怪しい雰囲気を醸し出しており独特の存在感があった。この例に漏れず、龍馬や、その他勤王の志士達を主人公にした作品における小栗は、幕府をフランスの傀儡とした悪の首魁として描かれることが多い。立場上仕方のないことではあるが、個人的には少し不憫である。