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Ⅷ. 考察

小栗忠順の魅力について、私見を述べる。

小栗忠順の魅力

幕末が好きだと言う人は数多いが、皆どのようなところに惹きつけられるのだろうか。坂本龍馬のように新しいものを貪欲に吸収し古い体制を作り変えるべく奔走する人々が遍く心に抱く大志に対する共感か、あるいは会津藩や新撰組のように過酷な環境に身を置きながらも最後の最後まで徳川に対する忠義を貫く姿勢に現代人が忘れがちな武士の美学を感じ取るか、その魅力は大方この2種類に分けられるのだと思う。改めて小栗の生涯を見返してみると、彼は例え海外のものであれど進んだ制度や技術は積極的に導入するべきという考え方を持ちながらも、衰退期にある徳川幕府を決して見放さず愚直なまでに守り続けた。私は、この合理的な思想と武士としての忠義両方を持ち合わせている姿こそが小栗の最大の魅力であると考えている。恐らくこのどちらかを強く持つ人物は他にも数多くいただろう。しかしこの一見相いれない思想を両立させ、かつこれほどまでにその信条を貫き通した人物は小栗ただ一人である。少なくとも自分の知る限りではこれに匹敵人物は存在しない。この姿は私にとって道徳的な規範にもなっている。恐らく現代においてもこのどちらかを持っているだけでは人間的な魅力に欠けてしまうのだろう、小栗忠順のように自分も可能な限り理屈と感情の両面を磨き上げ相手と本質的なコミュニケーションが取れる人物になりたいと強く願っている。